[ITコンサル]要件定義の初期段階における2つのアプローチ

ITコンサルをやっていれば当然システムの要件定義を行うことが多々ある。ここでは要件定義の初期段階で実施する、システムで解決すべき課題の洗い出し方法を紹介する。尚、課題を洗い出した後に解決方法を検討することになるので、実際にはシステムで解決すべきではない課題も洗い出される。例えば、人・組織が原因の課題などもこの段階で見つかることも多い。

目次

  1. 課題解決型アプローチと目標達成型アプローチ
  2. 目標(To-Be)と現状(As-Is)と課題(Gap)の関係
  3. 2つのアプローチの違い
  4. ITコンサルタントとしての実際の動き
  5. この後実施すべきこと

課題解決型アプローチと目標達成型アプローチ

課題洗い出しには大きく課題解決型と目標達成型の2つのアプローチがある。課題解決型アプローチとは、既に判明している、または、調査等により判明する課題を収集する方法。実際に行うタスクは調査(システム性能に問題はないか、過去報告書で述べられている課題の整理・精査 等)やヒアリング(エンドユーザ、システム管理者、システムオーナ等へ課題認識を確認)となる。
一方、目標達成型アプローチとは目標を設定し、現状を調査したうえで、目標と現状の差から解決すべき課題を洗い出す方法。実際に行うタスクは、中期経営計画や中期IT計画などの経営方針をブレイクダウンして目標を設定する、又は、部門長、部長、課長などの管理職レベルにヒアリングを実施し、次期に達成すべきことを明らかにしていく。現状の調査は課題解決型アプローチと同じように調査・ヒアリングを行う。目標と現状の差を明らかにする(分析する)方法はケースバイケースで多様なためここでは省略する。
尚、実際には両方のアプローチを組み合わせたハイブリッドなアプローチをとるのが一般的であるように思う。

目標(To-Be)と現状(As-Is)と課題(Gap)の関係

そもそもの構造をとらえると2つのアプローチの違いが見えてくる。構造は算数レベルに簡単なことで、以下の通り。
課題(Gap)= 目標(To-Be)- 現状(As-Is)
つまり、課題解決型アプローチとは課題を直接取得しに行く(そして、課題+現状で目標を設定する)方法で、目標達成型アプローチとは前述の通り目標と現状の差から課題を洗い出す方法である。

2つのアプローチの違い

2つのアプローチでは、大きくは難易度と効果の点で異なる。
先ず、難易度の観点で述べると、課題解決型アプローチが圧倒的に楽だ。基本的なタスクは前述の通り、調査やヒアリングで、実施するタスク数(ステップ)も少なく、結果を整理するのに手間がかかる程度で、分析などの頭を使う必要がほとんどない。一方、目標達成型アプローチは難易度が高い。中期経営計画委や中期IT計画からブレイクダウンするには経営視点とIT視点が必要となるし、ロジカルシンキングのスキルも必要となる(ブレイクダウンには上下関係がWhy so/So Whatがしっかりつながっていることと、広さがMECEであること確保しながら行う必要がある)。
また、目標と現状の差を明らかにする(分析する)には、比較軸を適切に設定して引き算を行うロジカルさが必要となる。
次に、効果の観点で述べると、目標達成型アプローチが圧倒的に効果が高い(可能性がある)。目標達成型は、経営方針からブレイクダウンしていくため、経営に効果のある課題を洗い出すことができる。一方、課題解決型は調査・ヒアリングにより洗い出した課題の積み上げで目標を設定するため、設定された目標が経営観点で効果があるか(KPIに好影響を与えるか)保障されない。

ITコンサルタントとしての実際の動き

クライアントの状況や要望によりケースバイケースではあるが、初期仮説としては解決すべき経営課題もあるし現場にも課題があるはずとして、ハイブリッドのアプローチを設定しておき、ミーティングを重ねていく中で、目標達成型と課題解決型の力点を置く割合を調整していくことが多いように思う。クライアントに特段の要望がなく、なんとなく良くしたい場合(特に公共や経営基盤が安定している大企業の場合にこのようなケースが多い)は課題解決型にシフトしていくし、目標が明確であったり、管理者層のモチベーションが高い場合には目標達成型にシフトしていく(コンサルタントとしてやりがいは大きくなるが大変にはなるのでコントロールは必要にななるが)。
ここでの注意点としては、課題解決型にシフトしていく場合、上位層もその方向性に同意しているか(しそうか)を確認しておく必要がある。前述の通り、課題解決型アプローチは効果は比較的小さいものになりがちであるため、上位層への報告時にちゃぶ台をひっくり返される、高いコンサルフィーを払ったにもかかわらずこんなものかと低い評価を受けるリスクがあるためだ。

この後実施すべきこと

ここで洗い出された課題を詳細化、具体化(原因の特定)した上でシステムで解決する範囲を決めていく必要がある。また、解決すべき課題が大きい、または、直近のシステム化(システム更改)では全ての課題解決が難しいことが分かれば、直近の目標(Target)の設定が必要となる。

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